
その研究成果、吉野家の店舗で実証してみませんか?
10年後の飲食業はどうあるべきか、自分たちはどうありたいか。大きく社会構造が転換し続ける今、「うまい、やすい、はやい」というこれまでの概念を超えた、お客様への新たな価値創造に向けて、研究者やテクノロジーベンチャーとの積極的な連携を活用した株式会社吉野家による“飲食業の再定義”が始まっている。
飲食業は未開拓の宝の山
例えば車に部品を固定する場面。人が付加価値を発揮しているのは、ビスで固定している瞬間のみであり、ビスを取りに行き、工具を手に取り、部品の位置を合わせて…という行為はすべて、付加価値を発揮するための付随作業だ。「如何にして付随作業を減らし、付加価値ある作業に集中させるか。それを徹底的に突き詰めたのが、トヨタ自動車が進めた生産方式です。この考え方を持ち込むことで、飲食業界は劇的に変わるはずです」。お店で最大の付加価値を発揮するのは、“調理”と“サービス(お客様とのコミュニケーション)”部分。つまり食材を冷蔵庫から出したり、お皿を並べたり、食器を洗ったり、という多くの業務もやはり“付随作業”。従業員の意識も能力も時間もすべてをお客様へ注ぎ込める環境をつくること、それが飲食業界において古田氏の目指す究極の業務改善だ。
テクノロジーで飲食業は激変する
未来創造研究所では、店舗設備や調理器具の開発、新メニュー検討など、研究者・ベンチャーと連携した多岐にわたる開発を進めている。中には既に実証のフェーズに移行しているものも多数あり、その代表例がライフロボティクス株式会社 の“CORO”などによる、食器洗浄工程の全自動化だ(写真左)。認識率の向上と速度UPを図ることで、店舗への導入に向けた開発が進む。また、店舗運営には欠かすことのできないシフト管理業務を、AIを用いて最適化する試みも複数店舗での検証に移行している。テクノロジーの実装により年齢や性別、国籍すら問わずに活躍できる店舗づくりが進められている。飲食業界において、高齢化による労働力不足が懸念されているが、吉野家ではアクティブシニアや女性が働きやすい環境を目指している。飲食業の再定義が、問題解決の一手となることは間違いない。
研究者との連携で新たな付加価値を
「私達の活動には終わりはありません。これまでの飲食業のイメージや習慣にとらわれず、どれだけ多角的な視点を取り入れられるか、一見無謀とも思える課題に挑戦できるかが勝負です」。今年で4回目となるリバネス研究費吉野家賞も、独自の視点を続ける研究者による課題設定とコラボレーションから生まれる新たな発想に期待をしている。必要に応じて、店舗を実証フィールドとすることや、様々な情報を提供することもできる。10年後の飲食業を共に創造できる研究者からのアプローチを待っている。(文・石澤 敏洋)
*1 産業技術総合研究所の研究員である尹氏が2007年に設立。肘回転関節がない協働ロボット“CORO(コロ)”を開発、販売してきた。2018年2月にはファナック株式会社の子会社となる。
第41回リバネス研究費 吉野家賞 募集開始!
対象分野:「飲食業界の課題解決につながる研究」
●採択件数:若干名
●助成内容:研究費50万円+店舗等を研究・実証試験フィールドとして提供
●申請締切:2018年8月31日(金)24時まで