2018年3月、カイオム・バイオサイエンス社は、同社が所有する抗セマフォリン 3A 抗体の開発に関する共同開発ライセンス及び独占的オプション契約を SemaThera Inc.(カナダ)と締結したと発表した。2017年9月には抗DLK-1抗体の開発に関するライセンス契約をADC Therapeutics, Inc. (スイス)と締結するなど、新規の抗体医薬創出に向けた創薬開発に注力している。有効な治療方法が確立されていない疾患のアンメットニーズに対し、抗体医薬による貢献を目指す同社は、その開発においてどのような戦略を持っているのか。同社の美女平氏、中崎氏、大西氏に伺った。
基礎研究から導出までをブリッジする
カイオム社は、約10日間で抗体を取得できるADLib法をコア技術として立ち上がったベンチャー企業だ。創業から13年、抗体の創出に関する豊富なノウハウを蓄積し、独自の創薬プラットフォームを構築している。この技術に基づいて開発パイプラインの拡充を進めており、前述の2つの導出例以外にも、がんや希少疾患などを対象とした複数の創薬プロジェクトが進行している。これらのパイプラインの特徴は、大学の基礎研究段階から創薬の支援を行い、創薬開発のフェーズを上げている点である。アカデミアだけでは困難な創薬研究を強力に支援するパートナーといえよう。
第38回リバネス研究費カイオム賞では、基礎研究の段階から抗体関連技術まで幅広いテーマの推進を目指して、3つのテーマを採択した。前回の受賞者である大阪市立大学の瀬戸氏は「臨床医と研究者、企業が三位一体に連携することが重要」と語っており、これまで存在した基礎研究と創薬のギャップを埋めるという同社の意図が臨床医の思いと繋がった採択であったことがわかる。

抗体医薬に繋がる全ての研究に着目
今回のリバネス研究費では、より一層広く”アンメットニーズの解決に繋がる研究”を対象としている。「対象疾患や研究のフェーズを絞らずに、広くテーマを募集したい」と、美女平氏は語る。抗体医薬に繋がる可能性のある、疾患メカニズムの解明を目指す基礎的な研究から、医薬用の抗体を作製するフェーズの研究、更には新規の抗体作製技術や、どのように標的に届けるかというドラッグデリバリー技術なども広く対象としている。「特定の疾患を対象とした研究でなくても、抗体医薬の発展に繋がりうる研究テーマであれば大歓迎です」(中崎氏談)。抗体医薬に繋がるかどうか現段階では分からない研究テーマであっても、カイオム社のもつノウハウと組み合わせることによって、課題が解決する可能性もある。
研究者とともにアンメットニーズに立ち向かう
医療におけるアンメットニーズに光を当てることを主眼に置くカイオム社。その実現をより多様なアプローチから目指していきたいという想いが、今回の募集テーマにも現れている。冒頭の抗セマフォリン 3A 抗体は横浜市立大学の五嶋良郎教授との共同研究によって産み出されたものだ。基礎研究の段階から寄り添い、諦めずに研究を行った成果が今回の導出に結びついた。
申請にあたっては、なぜそのテーマがアンメットニーズに貢献し得るのか、どうして人々の健康に貢献したいのかといった想いを表現して欲しい。そうすることで、抗体医薬の開発を早期から共に推進していくことのできる、パートナーとの繋がりを獲得できるはずだ。(文・五十嵐 圭介)
第41回リバネス研究費 カイオム賞 募集中!
●対象分野「下記の疾患における治療標的の確立に有用な研究」
・難治性がん ・希少疾患 ・指定難病
●採択件数:若干名
●助成内容:研究費50万円(マイルストーンにより追加250万円の研究費も準備しています)
●申請締切:2018年7月31日(火)