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第47回カイオム・バイオサイエンス賞採択者「ウェットとドライを使いこなし、新たな創薬手法を創造する」 宮本 康太郎さん

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[第47回リバネス研究費カイオム・バイオサイエンス賞]採択者インタビュー 
【採択者】
宮本 康太郎 氏(東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系 修士1年)
【採択テーマ】
De novo設計足場分子へのCDRペプチド組み込みによる 中分子医薬創製プラットフォーム
【研究費情報】
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薬作りにおいては、標的分子に特異的に結合する分子をデザインすることが重要になる。昨今では、高い特異性という点で抗体医薬が重用されているが、東京工業大学に通う宮本康太郎氏は製造コストが下がるペプチドに着目し、異なる標的認識のアプローチから新たな創薬を目指している。

二刀流のバイオ研究者の挑戦

 宮本氏は、アミノ酸分子が数個〜数十個連なったペプチドを薬として利用する中分子医薬と呼ばれる領域のテーマで、抗体医薬に匹敵する創薬を目指している。研究室配属前から、これからの時代は細胞や動物を使った実験に加えて計算を組み合わせた創薬がもっと必要だと考えていた。そこで、バイオ系の研究の世界では一般的にウェットと呼ばれる実際にタンパク質やDNAなどの分子を扱う実験と、ドライと呼ばれる計算科学の手法の両方を駆使して研究を進めている。研究室に配属した当初、抗体が標的に結合できる最小構造を、計算を使って見つける研究テーマを提示された。しかし、常識や前提だけに捉われずに、様々なケースを想定して、その中から出てきたアイデアを実際に試していくところが研究の面白さだと考える宮本氏は、並行して自分なりの仮説についても検証を行い、テーマを発展させた。それが今回カイオム・バイオサイエンス賞で採択されたテーマだ。

分子の“ゆらぎ”の抑制に着目した創薬アプローチ

 タンパク質はアミノ酸が連なり、三次元的に折りたたまれることで機能している。この時に安定して動きが少ない領域と、ロープの輪のようにフラフラと動きが多い領域に構造的に分けることができる。後者の動きが多い領域は薬が結合する標的部位として注目されているが、構造を取りにくいこともあって効果の高い薬ができにくいという課題が存在し続けている。この動きがある状態を、“ゆらぎ”と呼ぶ。宮本氏の研究の重要な点は、この“ゆらぎ”を制御することにある。動きを少なくすることで一定の形を取らせて、そこに薬になる分子をはめ込める状態を作るという作戦だ。このゆらぎ抑制機能を備えたタンパク質を宮本氏らは足場タンパク質と呼ぶ。

ゆらぎの中から結合配列を取り出す足場を探せ

 研究室で先行して行われていた“ゆらぎ”に着目した中分子医薬のデザインを、さらに発展させようとする宮本氏が武器にしているのが、米国の研究者らが作ったRosettaというタンパク質構造予測のプログラムだ。計算によって与えられたアミノ酸配列からタンパク質の構造を予測するのだが、精度の高さで一目置かれる存在だ。このプログラムを知った時、その応用可能性にとてもワクワクしたと振り返る。幸いなことに、東京工業大学にはスーパーコンピュータTSUBAMEという強力な計算能力を持ったインフラもある。持っているインフラを最大限活用しながら、宮本氏のRosettaを使った足場タンパク質の探索はすでに始まっている。ゆらぎを抑制し、ペプチドが認識できる構造を提示してくれる足場タンパク質の誕生に期待したい。

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