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第40回超異分野・五感×AI研究推進賞 採択者「物理情報をダイナミックに現実空間に表現する次代のインターフェイスを創る」鈴木 遼さん

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[第40回リバネス研究費超異分野・五感×AI研究推進賞]採択者インタビュー 
【採択者】
鈴木 遼 氏(University of Colorado Boulder/University of Tokyo Computer Science 博士後期課程2年)

【採択テーマ】
ソフトアクチュエータとAIを使った、環境に合わせてプログラマブルに変化する建築スケールの形状変化インターフェイス
【研究費情報】
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 AR(拡張現実)やMR(複合現実)などの進化により、近年ではグラフィカルな情報を現実空間に表現する技術が普及しつつある。しかし、鈴木氏が見据えるのはずっと先の未来だ。「ARやMRはグラフィカルな表現で情報を提示できるが、一方でフィジカルな情報は変わらない。例えば、ARやMRで机を作ったとしても、それは仮想的な机でしかなく、その上にモノを置くことはできないし、触ることもできない。それでは、ARやMRが普及しきったその先の未来には何があるか。そこでは、物理空間自体がコンピュータによって動的に変化するインタラクティブなインターフェイスになるのではないか」と考え、3次元形状の物理情報を現実空間の中で操作できるような基盤となる技術を開発している。

 これまでの研究では、視覚障害者向けの触れる2次元平面インターフェイスや、小さなブロックを用いて任意の3次元形状を瞬時に立体造形できるブロック式3Dプリンターなどを開発してきた。今回の申請では、例えば部屋の形を動的に変え、ユーザの行動に合わせて家具や床を出現させるといった、建築スケールでの物理インターフェイスの構築を目指す。それを可能にするために、人間が上に乗れる強度を備えたアクチュエーター技術や、空間上でのユーザの行動や操作をトラッキングできる技術の開発を行う予定だ「。リアルタイムで物理情報を変化できるインターフェイスがあれば、デザインやコミュニケーション、教育の形は大きく変わるだろう。例えば、20世紀のコンピュータが“図書館”をダウンロードできるようにしたように、ARやMRと組み合わせることで物理的な“サイエンスミュージアム”をダウンロードすることができるようになるだろう。まだまだ道のりは長いが、ARが元々50年前の研究から始まったように、数十年後の人類が使うインターフェイスの基盤を創りたい」と鈴木氏は未来を見据えている。

 元々、ゲーム理論やネットワーク理論を学んでいた鈴木氏だが、ゲーム開発者のニッキー・ケイス氏が手がけた、“ExplorableExplanations”という、ゲーム理論をインタラクティブに学べるWebツールに出会い、紙の本や数式とは異なるインタラクティブメディアの可能性に衝撃を受けたことがきっかけで、4年前からヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)の世界に足を踏み入れた。現在はコロラド大学に在学しながら、東京大学の矢谷浩司氏や筧康明氏、川原圭博氏らと共同研究を行いつつ、精力的にHCI研究を進めている。

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