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「食べる喜び」を全ての人に。 食の未来につなげる仕組み作りに挑む。 日本ハム株式会社

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左から中央研究所 主任研究員 長谷川 隆則 氏 中央研究所 所長 村上 博 氏 中央研究所 次長大石 泰之 氏

日本においては人口減少の危機が叫ばれている昨今だが、世界的に見ると人口は増加の一途をたどっている。さらに発展途上国の経済的成長に伴い肉や魚の消費が増えることで、2050年には現在の1.7倍量のタンパク質が必要になると見込まれている。このような背景の中、日本ハム株式会社は中期経営経計画2020のテーマに“未来につなげる仕組み作り”を掲げ、そのために必要な技術革新を模索している。

日本のタンパク質消費を支える多様な事業

社名に反して、日本ハムグループの事業は実に多様だ。売上の約6割は食肉が占め、ハムやソーセージ、惣菜、冷凍食品などの加工食品は約3割で、残りの1割が水産物や乳製品となっている。柱である食肉事業は、牛・豚・鶏の生産から販売までを自社で一括して行う。これらの国内産肉に海外産の肉の輸入販売を加えて、日本国内の食肉販売量の1/5を当グループが占めるという。さらに水産物は寿司だねや冷凍食品、缶詰などの加工販売のみならず、養殖事業も行っており、乳製品はチーズやヨーグルトなどの製造販売をしている。例えハムをあまり食べない人でも、何かしらの形で日本ハムグループの製品を口にしている可能性は高いだろう。

変化する食に、新しい寄り添い方を

「食の未来を考える上で、多様化する生活者ニーズや国内労働力人口の減少、世界規模での食糧問題など、課題が広範にわたる一方、世の中の技術革新や環境の変化はどんどん速くなっています。この様な中で、私たちが思いつかないような食の未来につながるアイデアを、研究者に求めたいと考えました」。中央研究所長の村上氏は、リバネス研究費日本ハム賞設置の理由をそう話す。
日本国内では少子高齢化や女性の社会進出による共働き、単身世帯の増加など、食卓をめぐる環境は大きく変化を遂げている。それに伴い、従来の“一家団欒の食卓”モデルは少なくなり、食行動だけでなく、食に関する意識も変わってきた。「私たちには、“食べる喜び”をすべての人に届けたいという想いが根底にあります。それは純粋な食材の提供だけでは成し得ません」。食は単なる栄養補給や空腹を満たすだけのものではなく、社会とのつながりやひと時の幸せを感じるための大切な時間としてますます重要性を増していくと考える。生産から消費行動まで、全体として食の未来の仕組みを作ることは、十分な食の供給を可能とし、人々の健康と心の豊かさにも繫がっていくはずだ。

世界の状況に対応した持続可能性を考える

さらに視点は海外へも広がっていく。もともと日本国内の食肉や加工食品の需要を満たすため、アメリカやオーストラリア、EU、中国、東南アジアなどからの輸入販売を行っているが、海外で生産された食材を現地で販売するための体制も築き始めている。そうなると、国、地域ごとの食生活や宗教、考え方、インフラなど状況に合わせて日本とは異なる対応が必要だ。「例えば途上国の中には、冷蔵・冷凍の輸送を行うためのインフラが整っていない地域も多くあります。またEUを発信地として広がりつつあるプラスチック利用の禁止や、家畜を健やかに育てるアニマルウェルフェアの考えへの対応など、社会の理解を得られる事業のあり方を作っていく必要があります」。
他にも、水産資源量の減少や、牛や豚を育てる際の水消費の多さも世界的な課題になっている。こうした中、海外では培養肉や植物性たんぱく質を従来の肉そっくりに加工した植物肉などへの注目も集まる。今、たんぱく質を取り巻く社会環境は大きな転換点を迎えているのだ。

研究者とともに、これからの食のあり方を描きたい

2042年に100周年を控える当グループでは、そのときのありたい姿に“世界各地で持続可能なおいしさのときを提供”を掲げている。その実現に向けたステップとして、2020年までのテーマを“未来につなげる仕組みづくり”としている。未来を見据えて、環境、社会、経済の各側面から自分たちの立ち位置を捉え直し、持続可能な仕組みづくりを目指す。「研究者の皆様には、ぜひ技術だけでなく、捉えている課題感や未来へのビジョンを聞かせてもらいたいと考えています」。生産、加工・調理、流通、保存、栄養、販売、そして消費行動や文化までを含めたこれからの食のあり方を共に描き、実装を目指したいと考える方はぜひ申請してほしい。(文・金子 亜紀江)

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対象分野:食の未来を創造する研究
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