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本気のワクワクが伝播する「科学の街」を創造する 児玉 智志

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児玉 智志 さん(2013年6月SBL取得)

修士2年からリバネスのインターンシップに参加し、就職のタイミングで一旦は卒業したものの入社3か月で再びインターンシップの場に戻ってきた児玉智志さん。始めはただ「楽しい」という気持ちで活動していた児玉さんは、どんな経験を経て、本気で取り組みたいと思える目標を持つまでに至ったのだろうか。2年半の在籍期間での心の変遷と現在の挑戦を聞いた。

とにかくがむしゃらに頑張って目標を探した

教育分野で就職先を探していた際にリバネスを見つけ、インターンシップを申し込んだ児玉さん。当時は修士2年で、この世で最も小さな導線ともいえる、原子1個から数十個でできた金属線の研究をしていた。インターンシップでは、実験教室や科学冊子の記事書きなどに積極的に取り組んだ。「最先端の科学を伝えたいと思っていたので、自分の研究を子どもたちに話すのが純粋に楽しかった」と振り返る。しかし、半年が過ぎた頃、ある実験教室でそれまでの自分はただ「楽しんでいるだけ」だったことに気づかされた。「リーダーは催促するのが仕事なんですか?」反省会で同じインターン生のリーダーが放った言葉が心に突き刺さった。「味覚の研究に関する内容で、専門分野外で大変だったのは確かですが、彼女とは本気度が違いました。自分で勝手に限界を決めて線引きをしていたと気づいたんです」。生温い自分が悔しくなり、それからはがむしゃらに取り組んだ。深夜0時に研究室から家に帰り、2、3時までインターンシップの活動をした。特に目標があったわけではないが、とにかくもっと打ち込んだら目標が見えてくるのではと期待していた。しかし、得たものは実験教室や記事を作り上げるスキルだった。もやもやを抱きながらも、大学院卒業のタイミングでインターンシップも卒業を迎えた。

何かひとつを選ぶとそれ以外はできないのか

就職活動をしていたときは、研究者・教育者・技術者のどれかになりたいと思っていた。卒業後は、技術者の道を選び、ナノテクノロジー分野の装置を製造する株式会社エリオニクスに就職した。現在はそこで電子顕微鏡の研究開発を行っている。しかし、仕事を続ける中、何か1つを選ぶと他ができないというのはおかしいと感じていたという。「インターンシップをもう少しやれば何か答えが見えてくるかもしれない」と淡い期待を抱き、仕事を始めてから3か月で再び門を叩く。戻ってからはインターンシップの組織運営を行うなど、俯瞰しながら取り組んだ。「以前とは違う視点から見ているうちに、リバネスの人たちは、研究者でありながら教育をしたり、事業創出をしたり、様々なことをやっていることに気がついたんです」。工夫をすれば、研究者・教育者・技術者の全てを叶えられるのではないか、むしろ、能力を融合することに価値があるのではないかと考えるようになったという。

自分の次の活躍の場を後押ししてくれたSBL

自分を変えた実験教室 広尾学園中学校・高等学校 「DNA研究者になろう! ~味覚の謎に迫る~」
自分を変えた実験教室
広尾学園中学校・高等学校
「DNA研究者になろう! ~味覚の謎に迫る~」

決してやりたいことが明確になったわけではなかったが、深く考える機会を作るため、「自分は何のリーダーとして社会に貢献するのか」を問われるSBL研修の最終面談を申し込んだ。そこで、最先端の現場にいる人たちが、科学技術の面白さを子どもに届け続ける「科学の街」を創る目標が見えてきた。「本気で面白いと思っているからこそ、子どもに伝わると思うんです。本気のワクワクを受け取った子どもが研究の世界に進んで、今度は次世代にその人自身のワクワクを伝える。そんなサイクルが生まれる街を作りたいんです」。

SBL取得は次なるチャンスを与えてくれた。自分のやりたいことを発信していたおかげで、横須賀に新しく学校を作ろうとしている方と繋がることができた。今は、その中で企業や大学の研究者を呼んだサイエンスキャンプをリーダーの1人として作っている。もちろん、世界一の顕微鏡開発を目指す技術者の1人として、自分も子どもの前に立つ予定だ。「SBLはノーベル平和賞的な感覚だと思う。自分の目指すものが認められ、これからもがんばれよと後押ししてくれる存在」。そう語る児玉さんが、夢の実現のためにどんな道を切り開いていくのか楽しみだ。 (文 金子 亜紀江)

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